ショーも最終日に
夕食のあと、旦那がなんだかいつもと違ってそわそわしていました。
なにか言い出したい様子でしたが、結局パソコンを置いてある部屋に引っ込んでしまいました。
私がお茶を持って様子を見に行くと、ようやく決心がついたようで「頼みたいことがあるんだけど」と話しを切り出してきました。
「今度のパソコンショーで僕の所の開発チームが作ったソフトを出品するんだけどね」
「電子カメラから画像を取り込んで電子アルバム作るソフトなんだけど」
「一応というか、女の子に衣装を着せて、コンパニオンやってもらうことになってたんだけどね」
「なにしろ会社が経費削減だとか言って、コンパニオンを頼むのやめて社員にやって貰うことになったんだけどね」
「いや、女子社員に頼もうとしたんだけど、断られてね」
「忙しくてそれどころじゃないとかまあ色々理由はあるんだけど」
「それでお前がコンパニオンやってくれないか、一応アルバイトということでアルバイト代もでるから」
といつもとは違って、やけに気を使った口調で話しを続けました。
私はそんな事くらいだったら、旦那に恩を売っておいたほうがいいと思って承諾しました。
数日前に、「原稿ができたから、これをマイクで繰り返し言えばいいだけだから」と数枚の紙を渡してくれました。
結構分量が多かったので旦那に恥をかかせてもまずいと思って私は必死で暗記をして練習を繰り返しました。
ショーの当日に準備中の会場に言ってみると、衣装に着替えるように言われました。
着替えてみると、なにかのアニメのキャラクターのコスプレみたいな衣装でした。
私はようやく、会社の女の子が出たがらなかった理由が分かってきました。
予定の時間になり入り口が開くと、大勢の客が一斉に会場に入ってきました。
さっそく説明を始めましたがすっかり上がってしまって、思うようには話せませんでした。
しかし何度も同じ台詞を繰り返すうちにだんだんと気分も落ち着いてきました。
ようやくショーも最終日になって、私もかなりしゃべるのに慣れてきました。
自分でも調子がいいくらいにスラスラと暗記した説明を繰り返していると、「私、こうゆうものですが」と名刺を差し出す男性がいました。
別に気にも止めずに名刺を、ショーの受付の名刺入れに入れようとすると、「プロダクションはどちらに所属なさってるんですか」と男が私に聞いてきました。
いったいなんの話しか分からずに私がきょとんとした顔で男を見つめ返すと「コンパニオンのプロダクションはどちらなんですか」ともう一度聞かれました。
「あ、私その、」と私が口ごもると、「よかったら、私どもの事務所の方に来て頂けませんか」と言われました。
名刺をよく見るとどうもモデルかコンパニオンの事務所のような名前でした。
「あとで、お話できませんか」と言われて私は、ショーのあと会場の近くで待ち合わせをしました。
ショーの終了時間がすむと、旦那は忙しそうにあと片付けを始めました。
旦那は他の客との話で忙しかったらしくて、さっきのモデル事務所の話しは聞いてなかったようでした。
私はちょうどいいと思って「もう帰っていいわよね、夕食の支度もあるし」と聞いてみると、「じゃ先に帰っててくれ」と言われました。
着替えをしようと着替え室に行ってみましたが、中は大変な混雑でドアも開けっ放しでした。
これはとても約束の時間に間に合わないと思って私は衣装のまま待ち合わせの駐車場までいきました。
「ここでは話しができませんから、ひとまずどかこゆっくり出来る所にご案内します、車にお乗り下さい」と言われて私は車の助手席に乗り込みました。
車はショーの会場から離れるとすぐに高速に乗り、都内を走ってからどこかの繁華街にまた降りていきました。
車は大通りから小道に入ると、裏へ回って小さなホテルの前につきました。
ホテルの駐車場に車を止めると、ホテルのロビーの喫茶店に入りました。
「ぜひ内のモデル事務所のモデルになっていただきたくて、もうあなたにぴったしの仕事が山ほど入ってるんです」と調子のいいことを言われて私はすっかりその気になってきました。
「ともかく、写真を撮りたいので、これからすぐ撮らせてもらえますか」と言われて私は大喜びでホテルの部屋についていきました。
部屋に入ると私をベッドの前に立たせて、男はデジカメで写真を撮り始めました。
「いや身体の線がすばらしいね、こんな色気のある身体はなかなかないよ、身体の線をもっとよく見たいからその上着ちょっと脱いでくれるかな」と言われて私は上着を脱ぎました。
すると「じゃ、そのブラウスも脱いじゃおうか、じゃまだよね、いや可愛い胸だ、もっとよく見えるようにブラウス脱いじゃおう」と男が言い出しました。
私はどうも話しが変だと思って、上着を手に取り直すと男に詰め寄りました。